2018年4月マリア・ジョアン・ピリス最後の来日公演に行きました!東京公演についてレビューします

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2018年4月、世界的ピアニストのマリア・ジョアン・ピリスの最後の来日公演が行われました。

ピリスは2018年のシーズンをもって引退することを発表しており、今回が最後の日本公演となりました。

ピリスは今回、岐阜、高崎、東京、大阪、浜松、川口で公演を行いましたが、そのうちの東京公演に行ってきましたので、レビューします!

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ピリス最後の来日公演はベートーヴェン、シューベルト、モーツァルトのプログラムでの全国ツアー!

今回、2018年4月の来日公演は、岐阜でワークショップを行った後、岐阜、高崎、浜松、東京、大阪でソロリサイタル、東京で協奏曲(NHK交響楽団)、川口と東京でデュオ・リサイタル(withリリット・グレゴリアン)を行う、という全国ツアーでした。

今回はピリスの引退に伴う最後の来日公演ということで、リサイタルのチケットはあっという間に売り切れていました。筆者はなんとか確保して、東京公演は全て行くことができました。

出費は痛かったですが、ピリスは自分が最も好きなピアニストの一人ですので、こういう機会は逃すことはできないと思ったのです。もう一生、聞けないのですからね(^_^;)

ピリスは押しも押されぬ世界的ピアニストですが、日本にもファンが多いピアニストということで、最後の来日公演には熱心なファンが多く来ていたようでした。

今年74歳のピリスは昨年、引退を表明したということで、理由はよく分かりませんが、年齢的に体力・技術力の限界を感じていたのかもしれません。ピアノを弾くのは結構な重労働ですからね。

ピリスは世界的ピアニストとしては手が小さいことで知られますが、ピアニストってある意味「肉体労働」ですので、年齢を考えれば肉体的限界などで自分の満足のいく演奏ができなくなったとかで、引退を考えることは十分ありそうです。さすがに74歳ですからね・・。

2016年12月に、ミラノのスカラ座でピリスのリサイタルを聴く機会がありましたが(モーツアルトのピアノ・ソナタ第12番と第13番、シューベルトのピアノ・ソナタ第21番)、本人としても納得していないような、本調子ではないのかな?と思わせる部分がありました。

(シューベルトの最後のソナタは、手の小ささから音を弾ききれない部分も散見され、本人も苦笑いしながら弾いていました)

そのこともありましたので、ピリスの引退を聞いたときは、残念でしたが仕方ないのかと思いました。全てには終わる時があり、いつまでも同じものが聴ける、ということはないのですから。

とはいえ、2015年11月に同じくミラノのスカラ座でポリーニのリサイタル(シューマン&ショパンのプログラム)も聞いたことがありますが、ポリーニは年齢を感じさせないようなエネルギッシュな演奏を続けていることを考えると、ポリーニは脅威的ですね。

ポリーニも、舞台に出てくるときは背中が丸くなった老人で弱々しく見え、ポリーニもそんな年齢になったのだと思わされますが、いざ演奏を始めると、昔のポリーニを彷彿させる鮮烈でクリアな演奏をするのですから、さすがに常人ではないと思い知らされます。

ちなみに、スカラ座は客のマナーが悪く、演奏中に平気でフラッシュをたいてカメラを撮ったりしているのですが、ポリーニは演奏中にフラッシュをバシバシあびても知らん顔で演奏に没頭していました。さすがに常人ではありません(^^;;

なお、スカラ座の時のピリスの場合は、楽章の合間に拍手が起こるので、「まだ終わりじゃないのよ」と言わんばかりに苦笑いで頭を振ってました(・・;)

さて、ピリスですが、推測ですが、自分の満足のいく演奏ができるうちに引退しようと思ったのかもしれません。

実際、今回の来日公演は、ピリスの万感の思いがこもった素晴らしい演奏で、「これで引退なんて勿体ない、まだまだ弾けるのに」と思った人は多かったのではないかと思います。こんな素晴らしい音楽がもう聴けないなんて残念・・と多くの人が思ったのではと思います。

ピリスは親日家だそうで、最後の来日公演で全国ツアーを行ったことも、日本への親しみの表れだろうと思います。一つ一つのコンサートを万感の思いを込めてこなしていたのではと思います。

前置きが長くなりましたが、筆者が行くことのできた東京公演をレビューしていきたいと思います。

東京・サントリーホールのソロリサイタル:ベートーヴェン・プログラムとモーツァルト&シューベルト・プログラム

東京では、サントリーホールで2回、ソロリサイタルが行われました。一つは当初の予定から変更されてオール・ベートーヴェン・プログラム(4月12日)、もう一つはモーツァルトとシューベルトのプログラム(4月17日)でした。

まず、12日のベートーヴェン・プログラムのリサイタルについでですが、当初の予定のシューベルトがベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」に変更されました。

これらのベートーヴェンのソナタの演奏はとても素晴らしいもので、個人的な感想を言えば、今回聞いた公演の中で一番良かったと思うのがこのリサイタルでした。

確かに技量的に、いくつかミスタッチがあったり弾きこなせていない部分はありました。しかし、それを超えるものがはるかにある演奏でした。

ベートーヴェンの曲とピリスの万感の思いが一致して相乗効果を発揮したというか、作曲家(ベートーヴェン)と演奏家(ピリス)の方向性が見事に同じというか、「ベートーヴェンの言いたいこと=ピリスの言いたいこと」とでもいうように、見事にマッチしているように聞こえました。

ピリスとしてはかなり感情的なベートーヴェンに聞こえましたし、かなりあからさまに感情や言いたいことを表現していたように聞こえました。

特に一番最初の「悲愴」は、「これが最後」との感情むき出しのようにさえ聞こえました。寂寥感が格別で、音で「さようなら、これが最後です」と言わんばかりの演奏でした。

この最初の「悲愴」は、まさに引退公演ならではの演奏でしたし、日本の聴衆に別れを告げているような音楽でした。ピリスは音楽家なので、言葉でなく、あくまでピアノで「さようなら」と言ったのだと解釈しました😌

こんなに惜別感の強い「悲愴」はなかなかないと思います。忘れがたい演奏になりました。

「テンペスト」を経て、後半は第32番。前半の感傷的なムードはなくなり、ベートーヴェンの深淵で広大な世界に入っていきました。

ベートーヴェンの長大なソナタが、ピリスの手にかかれば、ごく自然に音楽が流れていきます。長さを感じることもなく、あっという間に演奏が終わっていました。

第2楽章は深い瞑想の世界に入り込み、そこから壮大な音の大伽藍が築かれます。その振幅の広さには驚くばかりで、難解さを感じさせず、とても自然に聞かせるのはピリスならではでした。

アンコールはベートーヴェンの「6つのバガテルより第5曲 クアジ・アルグレット」。この曲も、なんとも「さようなら感」満載の曲でしたが、あえて感情を込めないように、早めにサラリと弾いていたように思いました。

この日(4月12日)のリサイタル後は、サイン会が行われ、長い長い列ができていました。残念ながら、この後の東京公演ではサイン会をやることはなかったので(懲りてしまったのでしょうか💦)、貴重な機会となりました。

筆者も並んでCDのジャケットにサインをもらうことができましたが、もっと用意しておけば良かったと思いました・・。熱心なファンは古いLPとか色々持ってきていたようですし。

17日のリサイタルはモーツァルトとシューベルトです。今回は、12日のような感傷的な感じはまるでなく、ひたすら音が温かみのある、ピリス的な音楽でした。12日とは対照的です。

曲目が違うので当然ではありますが、本人の意図したものなのか、暖色系の音楽で、12日が「これが最後」と惜別感溢れる音楽だったのに対し、今回は明るくサラリと振舞っていて、気がつかないうちにアッサリと「さようなら!」と言っているような感じの音楽でした。

12日のベートーヴェンが粘着気味だったので(これは作曲家のせいでもあるが)、ちょっと拍子抜けの感じすらしました。

アンコールは、シューベルトの「3つのピアノ曲 D946 第2曲変ホ長調」でした。ピリスのシューベルトは気品がありニュアンスに富んでいて、まさに耳のご馳走ですね😌

NHK交響楽団とのベートーベンのピアノ協奏曲第4番

4月20日と21日は、NHK交響楽団の定期公演に出演し、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番ト長調を演奏しました。指揮はブロムシュテットです。

両日とも行ったのですが、ピリスの演奏はもちろん予想通りの素晴らしいもので、全く危なげのない、この曲を隅々まで知り尽くしているという感じの堂々とした演奏でした。

アンコールはベートーヴェンの「6つのバガテルより第5曲」。12日のリサイタルの時と同じ曲でした。でも、堂々とした協奏曲の後だと惜別感がより感じられ、ピリスなりのさようならの挨拶なのだろうと思いました。

ところで、NHK交響楽団の実演を聞くのは20年以上ぶり😓だったのですが、N響、全く変わっていないな〜と思いました。変わっていなさすぎて、逆に安心?しました。

この楽団は良くも悪くも日本人そのものなのですね。和声感覚が??というのも、学芸会的なノリなのも、オーケストラ的な統一感のなさも、ここまで突き詰めれば立派な「個性」かもしれません。あんまり書くと怒られるのでこれ以上書きませんが(^_^;)

あと、ブロムシュテット・・。この指揮者はあちこちで遭遇してきましたが(聞きたい楽団の演奏会でなぜかこの人が指揮していることが多かった。この人は実力以上に良い楽団に恵まれていると思う)、自分が良いと思う指揮者ではありません。今回も、改めてそう思いました。

ブロムシュテットも、はや90歳(演奏会時)だそうで、(日本では)巨匠扱い?なのかもしれません。しかし、かつてのギュンター・ヴァントなどとは似ても似つかず・・。ヴァントの最晩年は、まさに巨匠と言ってよい存在でしたが。凡人は年をとったからといって大化けするわけではない、ということですね。当たり前のことですが。

というわけで、今回はひとえにピリスの演奏を聞くためだけの演奏会でした(^^;;

リリット・グレゴリアンとのデュオ・リサイタルはモーツァルト&シューベルト・プログラム

26日は浜離宮朝日ホールでリリット・グレゴリアンとのデュオ・リサイタルでした。この公演は、当初の日本ツアーで予定されていなかったのですが、追加で行うことになったものです。

グレゴリアンはピリスの弟子のようで、おそらく仲も良いのだろうと思われます。ピリスもグレゴリアンもリラックスした様子で演奏していました。

こちらも曲目が変更され、当初はオール・モーツァルト・プログラムだったのが、最後の曲目がシューベルトの幻想曲へ短調D940(4手)に変更されました。

プログラムはピリスとグレゴリアンの4手の曲が2曲の他、それぞれのソロが1曲ずつありました。

今回はデュオ・リサイタルということで、室内楽的なリラックスした感じの演奏会でした。これが日本公演最後の演奏会だったのですが、これが最後?というくらいアッサリしていました😌

最後のカーテンコールも、特別な感じもなく、アッサリ退場していきました。長い日本ツアー、やっと終わった、という感じだったのでしょうか(^_^;)

といっても、ピリスの音楽は堪能することができました。今回はデュオ・リサイタルだったので、ピリスとグレゴリアンのピアニストとしての格の違いが残酷までに現れてしまっていたのが・・・(テンテンテン)。むしろ、ピリスの凄さを再認識する演奏会となってしまいました💧

グレゴリアンは、技術的にも問題ないし、テンポも良いし、十分に良いピアニストですが、さすがにピリスと比べてしまうと、グレゴリアンは「普通のピアニスト」になってしまいます。

グレゴリアンは若いし腕力もあるのでガンガン弾けるのですが、ピリスのような繊細なニュアンスはありません。ピリスと比べると、全ての音が均一に味気なく聞こえてしまいます。ピリスみたいなニュアンスは天性の音楽性なんでしょうか。

ピリスとグレゴリアンの4手の曲を聞くと、グレゴリアンのガンガン弾く音にピリスの繊細な音が潰れてしまいます・・。弾いている2人は楽しいのでしょうが。グレゴリアンはまだ若いので、これからに期待です!

ピリスが非常に音楽性の高い、世界トップクラスのピアニストであることが再確認されました😋これで引退とは誠に残念・・。

アンコールはモーツァルトの「4手のためのピアノ・ソナタハ長調 k.19d」でした。

ピリスの引退後は?ピリスはインスタを開始、後進の教育活動にも力を入れる模様!

さて、2018年4月のほぼ1ヶ月にわたった日本ツアーは終わりました。これが最後の来日となるのか、遊びでも良いのでまた来日してくれると嬉しいですね。

そんなピリスさん、演奏会自体はまだいくつかこなすのかもしれませんが、引退後はどうされるのでしょうか。後進の教育活動に力を入れるとか言われています。

また、ピリスさんは、日本滞在中にインスタを始めました!日本滞在時の写真のアップから投稿が開始されています。時々写真を投稿しているようなので、フォローしてみるとピリスさんの近況がわかるかもしれません。

また、ピリスさんはインスタだけでなくネットにも関心があるのか、Imagine Clarityというサイトで、「クリエイティブジャーニー」というピアノの勉強プログラム?を開始したようです(有料のようです)。

このサイトは他にも瞑想なども取り扱っているようで、音楽だけでなく幅広い精神活動を目指すサイトみたいです(詳細は不明・・)。

ピリスさんは、どうも瞑想とかスピリチュアル的なものが好きそうな人のようですね。ブラジルに移住したり芸術家のコロニーみたいなものを作ったりしていますし、物質的世界より精神的世界の人であることは確かだと思います。

そもそもピリスさんのファッションがまさにそういう感じですからね。演奏会でも無印良品あたりを彷彿させるようなナチュラル系のファッションですから。こういうナチュラル系ファッション、あんまり行き過ぎてしまうと自分の場合、引いてしまうのですが(^^;; まあ、演奏がよければ別に構わないのですが。

最後に。ピリスさん、素晴らしい演奏をありがとう!引退後も充実して過ごされることを願っています!

さて、あれこれ書いてきましたが、ピリスは過去の素晴らしいピアニストたちと同じく、いつまでも人の記憶に残る、名ピアニストであることは言うまでもありません。

ピリスさん、これまで素晴らしい演奏をありがとうございました。また、引退後も様々な活動をされることと思いますが、充実して過ごされることを願っています!

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