2018年2月ミンコフスキ指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル東京公演をレビューします。リズム感があり溌剌としたミンコフスキらしい演奏のオール・メンデルスゾーン・プログラム!

マルク・ミンコフスキ指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル演奏会チラシ
マルク・ミンコフスキ指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル演奏会チラシ

2018年2月27日(火)に東京オペラシティのタケミツ・メモリアルで行われたマルク・ミンコフスキ指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの演奏会に行きましたので、レビューします。

プログラムはオール・メンデルスゾーンで、ミンコフスキらしい溌剌とした滑舌の良い、かつ繊細な音楽が楽しめました。

ミンコフスキは2018年9月からオーケストラ・アンサンブル金沢の芸術監督に就任することが決まっていて、日本との関係が深まりそうな気配です。

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演奏会場はほぼ満員!ミンコフスキの人気の高さが伺えます

今回の来日公演は、前日26日の金沢公演と東京公演の2公演のみだったせいもあるのか、当日券もあったものの、演奏会場はほぼ満員でした。

ミンコフスキの人気の高さが伺えます。

ミンコフスキとレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの来日公演は3度目ということです。

筆者は今回が初めての演奏会です。これまでミンコフスキの演奏会に行きたいと思っていたのですが、なかなか機会がなく行けていませんでした。

初来日は2009年で、ミンコフスキがラモーの様々なオペラから選んだ管弦楽曲「もう一つのサンフォニー・イマジネール」とモーツアルトの「ポストホルン」の演奏会、ハイドンの交響曲の演奏会の2公演を行ったとのこと。

その後の2013年の来日公演では、シューベルトの「未完成」とモーツァルトの「ハ短調ミサ」他を演奏したとのことでした。

ミンコフスキのこれまでの来日公演はとても評判が良かったと聞いていましたので、日本に固定ファンができているようです。

ミンコフスキは古楽系の指揮者ですが、古楽系で優れた指揮者というのはなかなかいないな〜というのが今までの個人的な印象でした。

そもそも古楽には詳しいわけではなく、専門的なことは分からないのですが、古楽系でこれはと思う演奏家に出会わなかったのですね。

あえて言えば晩年のアーノンクールでしょうかね・・。

それを別とすれば、古楽系というのはあまりピンと来てなかったのです。

そんな中、ミンコフスキの高い評判が聞こえて来たのですが、なかなか実際の演奏を聴く機会はありませんでした。

ところがある日、音楽番組でミンコフスキのシューベルトの交響曲の演奏会(ウィーンで行われたものでCDも発売されている)を見て、これは別格!と思い、ミンコフスキのファンになったわけです(笑)。

一般に古楽でよくあるような、ガツガツした感じはなく、ひたすら「音楽」になっていることにまず感心しました。

演奏を聴けば、ミンコフスキの音楽性の高さはすぐに分かります。

この手のものは、練習して得たというより、天性のものなのですね。音楽というのは才能が決定的だと思わされる一例です。

ミンコフスキは古楽の人なので、19世紀的な世界観に基づくロマン主義的なクラシック音楽とは異なる演奏をします。

具体的には、精神性や世界観を問題とする世界ではなく、ひたすら音楽性の世界です。

ヘンデルのような、演奏家の音楽性がダイレクトに問われる類の作品がぴったり来るタイプの演奏家です。

ミンコフスキは初期にはヘンデルをよく取り上げていたそうですが、それも納得です。ヘンデルは、ミンコフスキによく合う作曲家です。

演奏会のチケットは、S席で12,000円と、他の外来オーケストラの来日公演に比べれば安めなのが嬉しいところ。

レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルはミンコフスキの自前の団体なので(19歳で設立!)、安上がりに済むのでしょうか?

それとも古楽系だと一般的に安いものなのでしょうか?システムはよく分かりませんが。

古楽の団体とは言っても、奏者の数はそれなりにいましたので、人件費はかかってそうですけどね。

というか、他の外来のオーケストラが高すぎるのではと思います・・。

演奏会のプログラムはオール・メンデルスゾーン!

さて、肝心の演奏会ですが、今回は全てメンデルスゾーンのプログラムで、序曲「フィンガルの洞窟」、交響曲第4番イ長調「イタリア」、交響曲第3番イ短調「スコットランド」の3曲でした。

ミンコフスキは元はバロック音楽やバロック・オペラを演奏してきた人ですが、近年はロマン派にもアプローチしてきていました。

数年前に評判になったシューベルトの交響曲全曲演奏も、その一環でした。

ミンコフスキの音楽の特性から言って、後期ロマン派はさすがに合わないですが、前期ロマン派あたりまでは全然守備範囲に入るかな、という印象ですので、今回はメンデルスゾーンのプログラムと聞いて、期待してました。

筆者はロマン派音楽が好みなので、ミンコフスキが演奏してくれるととても期待してしまいます。

ただ、メンデルスゾーンあたりが限界値?かもしれないとは思いますが・・。

さて、演奏の方ですが、全般としてミンコフスキらしい、イキイキして溌剌とした、かつ繊細な音楽が展開されました。

まず、序曲「フィンガルの洞窟」では、ミンコフスキにしてはかなりロマン派寄りの演奏になっていたと思います。

そもそも曲がそういう曲だからというのもありますが、ダイナミックレンジも広く、古楽オーケストラと思えないほどの迫力と大音量でした。

この演奏だけ聴くと、この団体が古楽の団体とはちょっと思えないですね。ミンコフスキの指導力と奏者の力量にも脱帽です。

個人的にはフルトヴェングラーのロマン主義ど真ん中の強烈な録音が頭に残ってしまっているので、なかなかそれを超える演奏はないのですが(まあ当然ですが)、今回の演奏は水準は高かったと思います。

次は、当初の演奏順から変更されて、交響曲第4番「イタリア」が演奏されました。この曲は演奏された3曲の中では一番ミンコフスキ向きの曲と言えましょうか。

「イタリア」は終始明るい曲調でリズムも歯切れよく、溌剌として滑舌の良いミンコフスキの演奏スタイルとよく合っています。

最初から最後までミンコフスキらしい、期待通りの演奏でした。ミンコフスキの長所の一つは、クラシック音楽家の中でもリズム感がずば抜けて良いところですが、それが存分に生かされていたと思います。

休憩後は交響曲第3番「スコットランド」。憂愁がありロマンティックで、人気の曲ですね。

ここで演奏前に、ミンコフスキのミニトークが入りました。

「メンデルスゾーンはとても英国的な作曲家。作曲家にとってスコットランドは非常に重要な場所。この曲にはスコットランドの雰囲気がよく現れており、羊やお城といった情景も表現されている。この曲にはジャズの要素さえ感じ取ることができる。今日の演奏は、先日亡くなったフランスの偉大なジャズバイオリン奏者、ディディエ・ロックウッドに捧げる。」

といった内容のトークを時々冗談も交えつつ、英語で話していました。

ディディエ・ロックウッドは62歳になったばかりの2月18日に死去しました。

ミンコフスキのトークによると、ステファン・グラッペリにも匹敵する素晴らしいジャズバイオリン奏者で、もし知らないのならyoutubeで見てごらんなさい、と言っていました。

今回の演奏会では、演奏の曲順を当初の予定と変更し、「スコットランド」を最後に演奏することが数日前に発表されていました(当初の予定は「イタリア」が最後)。

指揮者の意向、としか理由は発表されていなかったのですが、おそらくロックウッドの追悼のため、最後にメランコリックで憂愁の色の濃い「スコットランド」を演奏したかったのかな?と思いました。

「スコットランド」とジャズの話も、最初はロックウッドへのこじつけっぽく感じられなくはなかったのですが。

しかし、おそらくミンコフスキがジャズに造詣が深く、ジャズに親近感を持っているであろうことは、なんとなく理解できました。

ミンコフスキの天性のリズム感を見れば、ジャズを愛好しているのは当然のように思えます。

古楽とジャズという、まるで縁のないようなジャンルですが、ミンコフスキにとってはどちらも音楽的な本質は変わりないのでしょう。

その「スコットランド」ですが、追悼の演奏とは言え、やはりミンコフスキらしい演奏になっていました。

ダイナミックレンジは広く、大音量の迫力もあり、満身の力を込めて指揮するミンコフスキでしたが、憂愁な中でもハキハキしていて滑舌の良い演奏になっていました。

もっと憂鬱なメランコリックな要素を求める向きには物足りないかもしれませんが、これはこれで高水準の演奏になっていたと思います。

演奏後は満員のお客さんの大喝采に応えて、何度も舞台に出てきていました。

もう疲れたから、というようなジェスチャー?をして退場、アンコールはありませんでした。

ミンコフスキは踊るクマさん?!指揮姿も人気の一つ!

演奏会に行ってみて、やはりミンコフスキはフランス人だな〜と改めて思いました。

ステージマナーもそうですし、明朗で繊細、というフランス人芸術家の典型みたいな感じがします。

ミンコフスキの演奏からは、プロヴァンスの強い日差し、カラッとした空気、青い海と山といったイメージが連想されます。決してジメッとした空気ではないのです。

ミンコフスキの音楽性の高さは、同じフランスの演奏家であるパイヤールを連想させるものがあります。

パイヤールはもっと典雅でおっとりした雰囲気がありましたが、ミンコフスキは現代風?にハキハキしている感じがします。どちらも素晴らしい音楽家ですが。

ところで、ミンコフスキというと、クマさんのような体型がトレードマーク?となっています。

クマさんみたいと言われる人はよくいますが、実際、ミンコフスキほどクマさんみたいに見える人は、なかなかいないのではないかと思われます。

クマさんといっても、プーさんみたいなかわいいクマさんです。これは最強です!

普通の人はメタボになっては困りますが、ミンコフスキの場合は、腹がへっこんでしまったらミンコフスキではない・・気さえしてしまいます。

指揮台で見事に踊る(指揮する)様子は、まさに「踊るクマさん」です。「ダンシング・ベア」などと呼んでいた観客もいました(笑)。

ミンコフスキの人気の高さは、あのビジュアルが大きな理由の一つとなっていることは間違い無いでしょう。

加えてあの音楽性とリズム感の良さですから、踊り(指揮)も素晴らしいのです。これを見るだけでも、演奏会に来る価値はあります(笑)。

ミンコフスキの指揮を見ると、指揮とは肉体表現であり、音楽性がダイレクトに現れるもの、という気がします。

ミンコフスキは指揮中の表情も豊かで、絶妙なところで面白い表情(変顔)になったりします。

今回は、舞台横の席で、ミンコフスキの指揮ぶりがよく見える席だったので、楽しめました。ミンコフスキを聴くときは、席も重要ですね・・。

ただ、あの体型ですから、心臓発作などを起こさないよう、健康には気をつけてほしいものですが。

ミンコフスキは9月からオーケストラ・アンサンブル金沢の芸術監督に!

ミンコフスキは、2018年9月からオーケストラ・アンサンブル金沢の芸術監督に就任するのだそうで、早速8月には東京でも就任記念公演として「ペレアストメリザンド」を演奏する予定になっています。

正直言うと、ミンコフスキクラスのすごい指揮者が日本のオーケストラの芸術監督になるなんて、一体どうしたの?と思ってしまいました。

どういう経緯でそうなったのか知りませんが。ただ、日本にとっては嬉しいニュースですが。

ミンコフスキって、特に日本に関心がある人と思っていなかったので、少し意外でした。でも、外国人演奏家って、大抵日本が好きですよね。

ともかく、日本と縁ができたので、ミンコフスキが来日する機会も増えるでしょう!これは朗報ですね。

現在50代半ばでまだまだ活躍しそうなミンコフスキですから、これからも注目したいと思います!

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