フランケンシュタインは怪物の名前ではなく、怪物を作った博士の名前!原作は19世紀イギリスのロマンティックな文学作品。映像作品とは異なる原作の魅力と原作者メアリー・シェリーについて紹介します。

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誰でも知っている人造人間の怪物・フランケンシュタイン。フランケンシュタインを題材にした映像作品はこれまでに沢山作られてきました。

そのため、フランケンシュタインといえば過去の映像作品による視覚的イメージが先行していますが、原作は19世紀イギリスの文学作品「フランケンシュタイン」です。

ホラー性と恐怖を強調した映像作品と異なり、原作は複層的なテーマを持った文学性の高い作品です。

今回は、原作に焦点を当て、原作のフランケンシュタインがどれだけ優れた文学作品であるのか、考えてみたいと思います。

では、行ってみましょう!

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作者は英国の19歳の女性!

「フランケンシュタイン」の作者はイギリスの小説家メアリー・シェリー(1797〜1851)。1818年に匿名で発表されました。

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)


メアリーは執筆時、19歳でした。当時は女性が作品を発表することは一般的ではなかったので、匿名の形で発表されました。

最初の出版時の序文はメアリーの夫で詩人のパーシー・シェリーが書いています。

「なぜ若い女性がこのような恐ろしい作品を書いたのか?」というのは、作者がメアリーであると公表された後、本人もよく尋ねられたようです。

確かに、誰でもそう思うでしょう(笑)。

ただし、原作を読んでみれば、あまりホラー小説という感じではなく、むしろ文学性が高く美的感覚の優れた作品であることは明白です。

ですので、設定だけをみれば確かに恐ろしいのですが、扱われているテーマや文章は全然怖くありません(笑)。

とにかく、この作品は人造人間というアイデアが天才的で、この作品が成功した決定的な理由はこれだと言ってもいいのではないかと思います。

メアリーが知人・友人らと、スイスのレマン湖畔にあるバイロン卿の別荘に滞在していた時、長雨を機に「怖い話を皆で一人ずつ作ろう」ということになりました(ディオダディ荘の怪綺談義)。

メアリーは、これがきっかけで人造人間というアイデアを思いつき、それを元に本作を執筆しました。

ちなみに、レマン湖畔のバイロン卿の別荘、ディオダディ荘はこのようなところだそうです。眺めは最高でしょうね〜。

By RobertgrassiOwn work, Public Domain, Link

作者メアリー・シェリーはなかなかの波乱の人生を送った人物

19歳でこのような作品を書いてしまうということからも、メアリーの才能は明らかなのですが、この人の人生もなかなか波乱万丈です。

・1797年(0歳):高名な作家・思想家の両親の元に生まれるが、生後すぐに母が死去

・1814年(17歳):詩人パーシー・シェリーとの恋愛に父ゴドウィンが激怒、メアリーはシェリーと駆け落ち

・1816年(19歳):息子が誕生、バイロン卿のレマン湖畔の別荘で過ごし、「フランケンシュタイン」の着想を得て、作品の執筆に取り掛かる。シェリーの妻が自殺、メアリーはシェリーと結婚

・1817年(20歳):「フランケンシュタイン」脱稿

・1818年(21歳):「フランケンシュタイン」匿名で出版

・1822年(25歳):夫シェリーがイタリア西海岸で溺死(ヨットの事故)、以後、子供の養育費等を作るために小説や旅行記等を精力的に執筆。

・1851年(53歳):ロンドンの自宅にて死去

メアリーの家族を始め、周囲の人は皆才人揃いです。

メアリーの母親(メアリ・ウルストンクラフト)は社会思想家で作家、フェミニズムの先駆者とも言われる人で、父親(ウィリアム・ゴドウィン)は政治評論家で、無政府主義者の先駆者とも言われる人でした。

高名なインテリで先進的な考えを持った両親を持つメアリーが文学的な才能を持っているのも納得かもしれません。

しかし、先進的なはずの父親は、シェリーとメアリーの恋愛を認めず、二人は駆け落ちすることに。

二人はバイロン卿を頼ってヨーロッパ大陸に駆け落ちするのですが、この時にメアリーの義理の妹クレアがなぜか一緒に付いてくる。

そして、クレアはバイロン卿の愛人となり、シェリーの妻は自殺と、もう人間関係がすごい(爆)。

パーシー・シェリー

By after Amelia Curranナショナル・ポートレート・ギャラリー, パブリック・ドメイン, Link

夫となったパーシー・ビッシュ・シェリーはイギリスのロマン主義を代表する詩人です。

メアリーが才能を発揮することを望み、メアリーの執筆活動を鼓舞したようです。

激情的な詩人らしく、死ぬ時も、ほとんど自殺同然に嵐の中にヨットで乗り出したそうです。

当然、死亡してしまいましたが、死体もかなりの損壊具合だったという話です。

メアリーと周辺の人々の話を書いていると止まらないので、作者の話はこれくらいにして作品の方に移りたいと思いますが、メアリーの人生模様はなかなかすごいですね。

メアリーは後年、「フランケンシュタイン」の改訂版出版にあたり、同作を「醜い我が子」と評していますが、同時にこの作品は自分の人生の幸福な時代に書かれたものであるので思い入れがある、というようなことを書いています。

確かに、この作品は、悲劇的な内容でありながら、どこかに人間や美を信じる気配、希望を信じる気配が濃厚に漂っています。

悲劇的でありながら非常にロマンティックでみずみずしい感性の作品でもあり、さすがに19歳の女性の作品だと思わせるところがあります。

決して人生の終焉も近い作家による作品のような、苦味を感じさせるような作品ではないのです。

それでいて、主題となるようなテーマは多層的・重層的で、全く単純な話ではありません。

フランケンシュタインは怪物の名前ではなかった! 正しくは怪物を作った博士の名前!

さて、やっと作品の方に移ります。

まず、自分も誤解していたのですが、フランケンシュタインとは、怪物(人造人間)の名前ではなく、怪物を作った博士の名前なのです。

怪物の名前は原作では出てきません。怪物を作った博士、つまり主人公の名前がヴィクター・フランケンシュタインです。

「フランケンシュタイン」の筋書きは、大雑把なあらすじだけ書いておきます。

【あらすじ】

幸福な少年時代を送ったヴィクター・フランケンシュタインは、科学の真理を突き詰めてみたいという熱意にかられ、ついに人造人間(怪物)を作り出す。

しかし、ヴィクターは、人造人間を作り出した瞬間に恐怖に襲われ、怪物を放置して逃げてしまった。

放置された怪物は森の中を彷徨い、食べ物の取り方など生物として生きる術を自力で会得し、近くの隣人一家の様子を観察することで高度な知識や言語力なども会得した。

しかし、自身の醜い姿により、自分を見た村人からは化け物と罵られ暴力を受け、親しくしたいと熱望した隣人一家にも拒絶されてしまう。

ヴィクターが怪物のポケットに押し込んだ日記から自分の生い立ちを知った怪物は、こんなにも人間の共感と友情を求めている自分が決して人間に受け入れられることがない悲しみと怒りから、自分の創造主であるヴィクターへの復讐を誓う。

怪物はヴィクター自身を殺すのではなく、ヴィクターの家族や親友を次々に殺すことでヴィクターに復讐した。

大切な人を全て怪物に殺されたヴィクターは、ついに怪物を自分の手で殺すべく怪物を追う旅に出る。

北極圏でついに怪物を見つけたヴィクターは、しかし力尽きて死亡する。

ヴィクターの死を知った怪物は、自分ももはや死ぬのみだと言い残して消えていった。

多彩な文学テーマ

フランケンシュタインというと、映像での怪物のイメージからホラー的な要素を思い浮かべてしまいますが、原作はなかなかロマンティックな作品です。

原作を読むと、ホラー的要素はほとんどなく、むしろ文学的に様々なテーマを見つけることができ、それがこの作品を奥深いものにしています。

次の記事では、「フランケンシュタイン」の多彩なテーマについて触れてみたいと思います!

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

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